金正恩から娘ジュエへの「権力継承」が失敗しそうな三つの理由
金正恩氏は、自らが後継者として十分な準備を整えないまま急逝した父・金正日氏に対し、内心では距離を置いているとみられる。その姿勢は、政策運営や演出の随所に表れている。
(参考記事:【写真】金正恩父娘“恋人のような密着シーン”に北朝鮮内部から「おぞましい」との違和感も)
では、経済的停滞と国際的孤立という「負の遺産」を目の前で拡大再生産する父を、娘ジュエ氏はどのように受け止めるのか。巷間では、叔母の金与正氏との権力闘争が語られることが多いが、それ以前に、父娘間の意識の断絶が深刻化する可能性がある。
とりわけ、世代間の価値観の差は大きい。金正恩氏が米韓敵視を当然視する環境で育ったのに対し、ジュエ氏の世代は、密輸や闇市場を通じて流入する海外の消費文化に強い影響を受けている。自由で豊かな生活様式を知る若者にとって、体制が強いる「敵意」と「禁欲」は、次第に空虚で馬鹿らしいものに映るだろう。その違和感を押し殺し、「忠誠」の演技を続けることを父から求められた時、どこまで耐えられるかは不透明だ。
世襲体制は、単なる血縁では維持できない。経済的成果、社会統合、そして指導者自身の内的納得がそろって初めて成立する。これら三つが同時に揺らぐ中で進む金正恩から娘ジュエへの権力移行は、北朝鮮体制の新たな不安定化要因となる可能性が高い。
